かっしーの家別館 過去の湘 南二都物語プロローグ
いざ、「電車で」鎌倉 へ!
−鎌倉地域交通円滑化実 験、行われる− (Vol.1)
いにしえの面影を今に伝え、京都・奈良と並ぶ日本人の心のふるさと、古都 鎌倉。
首都圏に位置することもあり、年間を通じて、多くの観光客で賑わっていま す。
しかし、古都なるが故の大きな悩みを、鎌倉は抱えています。
鎌倉駅を中心とする、鎌倉時代に開かれた地域、通称「旧市街地」と言ってますが、この歴史的建造物が多く 残る地域は、それ故に都市基盤の整備に大きな制約が課せられているのです。建物の建て替えなどの開発行為が厳しく制約されているのをはじ め、重要な都市インフラである道路整備がままならず、旧市街地の道路はそのため幅員が狭いところがほとんどで、自動車が主体となった現在 の交通需要に対応しきれないのです。
鎌倉はその歴史的価値から、こうした開発行為が制約されるのは当然のことなのですが、観光客はマイカー利
用に慣れきっており、どんどん車で鎌倉へやってきます。その結果、狭い市内の道は激しい渋滞に悩まされ、観光客自身はもちろん、地元住民
の生活にも重大な支障が生じつつある状況です。
それだけにとどまらず、車の増加は豊かな自然に恵まれた鎌倉の地に深刻な環境破壊をもたらしているなど、まさに現在の鎌倉は、車の洪水にアップアップの状態なのです。
◇ ◇ ◇
そんな状況を打開しようと、1995(平成7)年7月に、市民・学識経
験者・関係(行政)機関などで構成される「鎌
倉地域交通計画研究会」が発足
し、交通問題の改善に向けて検討をはじめました。そして翌年の96年春には、「鎌倉地域の地区交通計画に関する提言」というまとめを行い、今後の鎌倉地区の交通のあり方についての方向性を示したので
す。
そして鎌倉市当局ではこの提言に基づき、研究会との共同作業により地区交通計画の実現に向けた取り組みを始めました。
具体的な取り組みの第一は、96年秋に行われた「七里ヶ浜パーク&レールライド交通実験」で、これは七里ヶ浜の国道134号線沿いにある駐車場を利用して、そこに観光客に車
を止めてもらい、その後最寄りの江ノ電七里ヶ浜駅から、電車で鎌倉市内へと入ってもらおうというものでした。
そして第二が、98年5月の「公共交
通乗り継ぎシステム交通実験」で
した。これはソフト的なもので、旧市街地を中心とするエリア内を走るバスの乗り降りが自由にできる切符(「環境フリー手形」等のネーミン
グで呼ばれています)を利用してもらうものでした。これらの実験の成果を様々な角度から評価・分析し、より実効のあるシステムの確立へと
検討が進められました。
今回(99年11月)に行われた一連の実験は、以上のような積み重ねの上にプランニングされています。具 体的なメニューは、次のようでした。
1 七里ヶ浜パーク&レールライド 96年秋に行われた実験に準ずるもの。 2 公共交通乗り継ぎシステム 98年5月の実験に準ずる。「鎌倉フリー環境手形」の発売と乗合タクシーの活用。 3 鎌倉霊園・深沢国鉄跡地利用パーク&バスライド 鎌倉霊園及び深沢国鉄跡地に観光客のマイカーを止めてもらい、そこからシャトルバスで鎌倉駅付近まで入 るシステム。 4 今小路通り歩行者尊重道路 今小路通り(鎌倉駅西口側を横須賀線に平行する裏通り)の交通規制、車の速度低下策。 5 1と連携した、情報提供による車両誘導策 七里ヶ浜で、そこから鎌倉駅までの所要時間情報(電車・車)をドライバーに提供。 |
ここではこの5つの内、1と3の実験を中心に、実際に行われた模様を見ていきたいと思います。
◇ ◇ ◇
ここが七里ヶ浜、パーク&レールライドで使われている駐車場です。
元々、このエリアを走る国道134号線は、江ノ島たもとの東浜から鎌倉の滑川までが有料道路で、現在は無料で開放されていますが、有料
当時はこの七里ヶ浜に料金所がありました。この駐車場はそのときの名残とも言えるもので、現在は休日などに七里ヶ浜へサーフィンをしに来
る人たちなどが重宝に利用しているほか、一角にはファーストフードの店なども出店したりしています。
この一部を借りて、パーク&レールライド用の駐車場としているのです。
パーク&レールライドの概要は、次のとおり です。 ☆利用者は1,500円の 協力金を払うと、駐車場に5時間車を止められる他、大人2人分の江ノ電(七里ヶ 浜〜鎌倉間)と横須賀線(鎌倉〜北鎌倉間)のフリー切符がもらえる。同乗者(3 人目以降)は500円。 ☆この他、乗合タクシーも利用でき、更に協賛寺社の 拝観料、美術館・文学館などの入館料の割引、協賛店の特別サービスも。 ☆実施するのは、11月中の土・日
で、時間は9時〜19時の間。 |
上の2枚は実験が始まったばかりの、11月7日午前の撮影ですが、残念ながら利用は芳しくありませんでし
た。
この日の朝刊にもありましたが、まだアピールが不足していると思われる他、前日の土曜日は学校の登校日で、ファミリー層の外出が少な
かったと考えられることなどが理由として挙げられると思います。一応西側から鎌倉へ向かう車については、腰越付近でドライバーにPRチラ
シを配るなどの努力も行われているのですが。
発想としてはとてもいいものがあると思われるので、更なる利用が望まれるところです。
◇ ◇ ◇
パーク&ライドというのは、市街地への車の乗り入れを防ぐシステムとして、国内外の各地で行われているの ですが、駐車場の利便性(料金面含む)が高いこと、乗り継ぎが便利なこと、乗り継ぎする交通機関の利便性が高いことなどが成功の秘訣とい えそうに思います。
鎌倉旧市街にある駐車場は台数が少なく高いので、1,500円で5時間止められれば、かなりお得だと思い ます。江ノ電も日中は12分間隔で運行しており、この面での利便性も申し分ありません。やはり、アピール不足なのでしょう。この他考えら れるのは、カップルの場合、車からあまり降りたくないでしょうから(笑)、こうしたシステムの利用は少ないと思われます。やはり、ファミ リー層の利用が中心でしょうね。
また、七里ヶ浜はもう鎌倉市内ですが、理想を言えばもう少し郊外の、幹線道路沿いに駐車場があれば、更に
利用しやすいと言えそうです。これはまず不可能なことですが、例えば、東戸塚の駅付近などに駐車場があれば、あそこは駅のすぐそばを横浜
新道が走っているので、ドライバーの立場としては利用しやすいでしょう。鎌倉へも横須賀線一本で行けますし。
これぐらいの条件が整わないと、本格的なパーク&ライドは、なかなか成功しないように思います。
これらの問題点は、今回初めて行われたパー
ク&バスライドでよりはっきりとしてきます。次にこれらの模様を見
てみることにしましょう。
◆お・ま・け◆
ここ七里ヶ浜では、今回の実験とは直接の関係はないのですが、先進的な試みが
既に実現されています。
それは、バス&レールシステムです。
七里ヶ浜駅から、近くにある鎌倉プリンスホテルや、奥に広がる七里ヶ浜の住宅
地を結んで循環するミニバスが走っているのですが、このバスは江ノ電の電車との間に乗継割引があり、このバスと電車を乗り継ぐと、バスの
所定運賃170円が、100円になるのです。
バスと電車の乗り継ぎは、通常ですと運賃はそのまま加算されるため、割高になってしまいますが、七里ヶ浜ではこのシステムにより運賃を低く抑えて、住民のマイカー利用を公共交通機関へとシフトさ
せることを狙っているのです。
こうした乗り継ぎ運賃割引制度は、札幌や大阪などの公営交通で広く取り入れられていますが、首都圏では東京に若干の例がある他は、見か
けません。七里ヶ浜の場合も江ノ電がバスと電車の両方を運行しているため可能なのですが、これまでの例が都市部での割高な運賃併算制の弊
害を防ぐのが主な目的だったのを一歩進めて、住民のマイカー利用の抑制をも視野に入れた七里ヶ浜のシステムは、今後の地域交通のあり方の
一つの見本となるように思われます。
◆この七里ヶ浜のバスのあらましを、湘南二都物語でご紹介しています。こ
ちらを
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