かっしーの家別館 過去の湘南二都物語プロローグ

いざ、「電車で」鎌倉 へ!

−鎌倉地域交通円滑化実 験、行われる− (Vol.2)

鎌倉市役所駐車場に待機する、京急のミニ バス(普段見られないバスが応援に駆けつけました。)

◇          ◇          ◇

 パー ク&バスライドは、鉄道の利用できない駐車場から鎌倉市内へ観光客 を運ぶシステムです。
 これはまた、多方面から鎌倉へやってくるマイカーに対応するという意味もあるのでしょう。
深沢駐車場は主に県央部や国道1号線方面からの、鎌倉霊園駐車場は主に首都高〜横浜横 須賀道路方面からの利用者をそれぞれ対象としていると考えられま す。


パーク&バスライドとは・・・

☆利用者は車1台あたり1,000 円の協力金を払うと、鎌倉霊園・深沢の駐車場に車を止めることができ、そこからシャトル バスで鎌倉中心部まで行くことができる(運賃は、同乗者全員含め往復無料。途中下車不可)。

☆この他、乗合タクシーも利用でき、更に協賛寺 社の拝観料、美術館・文学館などの入館料の割引、協賛店の特別サービスも。(パーク&レールライドと同じ。)

☆実施するのは、11月中の 土・日で、時間は9時〜17時の間。

 この2カ所で実施された実験では、結果にはっきり差が出ました。
 鎌倉霊園駐車場の利用率が比較的多かったのに比べ、深沢駐車場の利用が相対 的に少なかったのです。

 この風景は、鎌倉霊園駐車場です。
 鎌倉霊園は、鎌倉市と横浜市金沢区の境、朝比奈峠(古道、朝比奈切り通しがあることで有名です)付近に位置する広大な霊園で、著名人のお墓 が多くあることで知られています。パーク&バスライドの駐車場は、この霊園の一番奥のスペースに設けられました。付近の山は紅葉に色づき、霊 園内のドウダンツツジもすっかり赤くなっていました。

 この霊園の入り口は県道金沢鎌倉線に面しているのですが、この県道は横浜横須賀道路の朝比奈インターと直結しているため、東京方面から鎌倉へ車でやってくる場合のメインルートと なっています。
 インターを降りた車は鎌倉へ向かう場合、この県道に入って市境の朝比奈峠をヘアピンカーブの続くルートで越えるのですが、ちょうど峠道が終 わるところにパーク&バスライドのための霊園駐車場入り口があるロケーションになっています。そしてこの県道は朝比奈インターから鎌倉に抜け る最短ルートのため、交通量も多く、結果としてこの実験が行われていることを知っているドライバーが多く通ったため、比較的多くの利用者が あったと考えられます。

 ちなみにこの県道は、最終的に鶴岡八幡宮前に出るのですが、メインルート故休日ともなると必ずと言っていいほど八幡宮前を先頭に深刻な渋 滞が発生します。
 今回の実験でもそのために、シャトルバスの鎌倉市内側終点は鶴岡八幡宮手前の横 浜国大付属小・中学校校庭となりました(この下の風景です)。

 このシャトルバスに使われたのは、鎌倉市内に路線網を広げる京浜急行バス鎌倉営業所の中型バス、そして同追浜営業所(横須賀市)のミニバ ス、計4台でした。この道を通る以上八幡宮手前までとはいえ、どうしても末端部で渋滞に巻き込まれてしまうのは宿命ですが、それでも私が7日 (日)に見た限りでは、結構頻繁にシャトルバスが往復していました。
 バスの運行は定時ではなく、お客さんがある程度まとまった段階でフレキシブルに行われ、運行の指示は鎌倉市の職員が携帯電話でやりとりして 決めていたようでした。途中渋滞があるとどうしても所要時間が延びてしまうため、バスの配車指示タイミングがなかなか難しい様子でした。

 一方こちらは、深沢駐車場です。
 深沢というのは旧市街から北西部に行ったところにあり、大船〜江ノ島間を結ぶ湘南モノレールと、県道藤沢鎌倉線が交差する付近の地名です。 モノレールにはズバリ、湘南深沢という駅があります。
 止まっているマイクロバスは、鎌倉市の委託運行(鎌倉市教養センター)用の江ノ電バスです。今日はパーク&バスライドでアルバイト中です。

 こちらの駐車場は、国鉄跡地、正確には国鉄大船工場の敷地の一部が不要になった空き地を利用しています。国鉄大船工場は現在もJR東日本 大船工場(電車等の点検・修理等を行う)として存続しており、上の写真の奥に見えるのがその一部です。
 しかし、この駐車場に入るのは不便で、湘南モノレールの下をずっと通っている、京 浜急行自動車専用道(大船〜龍口寺間、昭和初期にできた日本初の自動車専用道(有料)。現在は鎌倉 市道に移管)に出るしかありません。

 しかもこの道は、この方面の幹線である国道1号線などと直結していないので、地元の人以外はちょっととまどうことでしょう。そのロケーションの悪さは、深沢駐車場の利用率の低さに 表れています。
 初日(6日)は数台、そして7日(日)も、利用率はあまり上がらなかったようです。(追記;14日(日)は、少し利用者が増えていたようで した。)

 こちらのシャトルバスの経路は、深沢駐車場から市道を短い区間通って、深沢交差点から県道藤沢鎌倉線に出、常盤口あたりから鎌倉駅西口に 抜ける裏道に入って、駅近くの鎌倉市役所駐車場が 終点となります。
 上の風景は、ちょうど県道から裏道に入って鎌倉市役所に向かう途中の、京急ミニバス(追浜営業所)です(撮影場所;上の地図参照)。この道 は現在定期バス路線はなく、このようなバスの走行風景は貴重なアングルです。
 こちらのルートで使用されたバスは7日現在、京急バス鎌倉営業所及び追浜営業所のミニバス4台と江ノ電バスのミニバス(又はマイクロバ ス)1台、計5台でしたが、フルに活躍するまでには至らなかったようでした。

 2000年3月、このルートにミニバス路線が開通しました。鎌倉駅西口〜桔梗山、山の上ロー タリー(2005年12月からは鎌倉中央公園)を結びます(こちらでご紹介しています)。
 これはパーク&バスライドというよりも、住宅地と駅を渋滞を避けて結ぶのが目的だと思いますが、交通実験でこのルートの有効性が評価さ れての結果だと思います。(2005.12.27.付記)

 鎌倉市役所駐車場の風景を、何枚かご覧頂きましょう。

 左の風景が、シャトルバスの受付兼乗り場です。鎌倉市役所の庁舎が左手に見えています。市役所から鎌倉駅西口へは、歩いてすぐです。右の 風景は、市役所駐車場で待機するバスの様子です。江ノ電のミニバスの姿(クリーム色)が目を引きます。
 ちなみに鎌倉駅は、小町通りや若宮大路などがあって賑わっているのが東口で、西口は地元では、裏駅といわれています。西口にあるのは江ノ電 の乗り場の他は、タクシープールくらいで、ほかは、若干の商店くらいと、東口に比べるとかなりこじんまりとしています。
 もっとも、鎌倉に落ち着いたたたずまいを求める人々にとっては、裏駅は貴重な存在なのですが。

 そして・・・

 これが、乗合タクシーです。写っている のは、地元グリンハイヤーの車です。
 乗合タクシーは、この市役所駐車場から、裏道を通って大仏様の裏をかすめ、由比ヶ浜の鎌倉文学館までを結びます。パーク&レール・バスライ ドをご利用の方や、鎌倉フリー環境手形をご利用の方は、この乗合タクシーを次の格安料金で使うことができます。(蛇足ながら、後ろの紅葉がき れいですね♪)

1区間まで;100円  2区間以 上;200円

 これはきわめてお得で、経路も渋滞に巻き込まれないなど良いプランだと思われますが、これも利用はあまりふるわなかったようです。タク シーを乗合で使うという概念が定着していないのと、やはりPR不足、そして今回の実験参加者があまり多くなかったことが、大きな原因でしょ う。乗り場が駅前でないことも、フリー環境手形利用者を逃がしているように思われます。

◇          ◇          ◇

 以上、今回の実験の目玉ともいうべき、パーク&レールライド・バスライドでしたが、実際行ってみると、様々な 貴重なデータを得ることができたと言えそうです。特に、初めて行われたバスライド関係に、それが言えると思います。
 鎌倉市としては、得られたデータを今後分析するとともに、分析結果のフィードバックとして更なる交通実験を今後も行っていくようですが、古 都鎌倉を守るための先進的取り組みとして、これら一連の実験の成果が大きく開花する日の来ることを、期待したいものです。
 最後に、これから鎌倉を訪れようとなさっている皆さん!鎌倉の将来は、我々の双肩にかかっていると言っても過言ではありません。是非これら 実験の趣旨にのっとった、環境に優しい行動をしていきたいものですね♪

 いにしえからの贈り物、この鎌倉のすばらしい環境を、みんなで守っていきましょう!


 そして・・・実験終了 (99.12.1.付記)

 1ヶ月にわたった鎌倉交通実験も、無事に終わりました。結果はどうだったのか・・・

 結論から言えば、残念ながら、予想を下回るものだったようです。
 今日の神奈川新聞によると、パーク&ライドの利用者数は、鎌倉市役所の予想に反して平 均2割にとどまったそうです。この原因として、鎌 倉へ来る観光客数の減少が考えられるとのことでした。96年に行われた実験では、七里ヶ浜駐車場は 8割もの利用があったそうですが、今回は国道134号の渋滞がほとんどなく、結果として素通りされてしまったようです。
 私もこのレポート作成のために、何度か鎌倉まで出かけたのですが、海岸沿いの国道134号も、そして鎌倉旧市街の道路も、車の台数は少な目 でした。134号線など、私の今までの印象ではいつも休日は大渋滞といった印象なのですが、今月はちょっと勝手が違っていました。結構流れて いるのです。旧市街も、さすがに鎌倉駅付近は混んでましたが、長谷付近、県道藤沢鎌倉線沿い(梶原口〜大仏〜長谷など)も、明らかに車の台数 が少な目でした。そして鎌倉だけでなく藤沢も、私は車の台数がいつもより少ないように感じました。

◇          ◆          ◇

 まあ、これまでの経緯からすると、鎌倉へやって来る車の台数が減ることは良いことで はあります。それに、環境手形など、電車で鎌倉に来る観光客向けの施策はまあまあの利用率だったようなので、今回の結果から鎌倉の観光客が 減っているとすぐに断定することはできないでしょう。車から電車利用に切り替えて下さった方々もいらっしゃると思います。しかし最近、江ノ電 の乗降客数も、私にはどうも減っているように感じられるので、結論は今回のデータその他の詳細な分析を待たねばならないとは思いますが、大ま かな傾向として、観光客の減少はあるように思います。

◆          ◇          ◆

 鎌倉を訪れる観光客数の減少。これは、私にとって全く想像もしていなかったことです。首都圏に位置し、交通至便なロケーションを誇る日本 を代表する観光地の一つ、鎌倉。これまでにも不況の時など、遠出する観光客は減っても、鎌倉など手近なところは、手軽に行けるというので観光 客数がむしろ増える傾向にあったのですが。

 これは、何か構造的な要因が原因なのかも知れません。もしかすると、多様化する価値観の中で、観光客の嗜好自体が変わって来ているのかも 知れません。昨今の不況、吹き荒れるリストラの嵐、少子化、横浜みなとみらい地区など新たなレジャースポットの増加、といった社会的要因もも ちろんあるのでしょう。当面はじっくりと様子を見るのが賢明だとは思いますが、どうもこの問題は、市当局、寺社、商工業者など関係者一同が、市民を巻き込みつつ、長期戦覚悟で腰を据えて、じっくりと真 剣に取り組んでいく必要がありそうな気がします。

 鎌倉という街の将来ビジョンをも、揺るが しかねないことですから・・・

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2005年12月、ページの再アップにあたり、現在の鎌倉を取り巻く状況について記してみたい と思います。
鎌倉への観光客の入り込みはここ数年、年間1700〜1800万人と横ばいで推移しているようです。
上に挙げたようなことが主な要因なのは、変わっていないように思います。

そんな中、いよいよ鎌倉も以前からくすぶり続けていた「世界遺産」への登録を目指し動き始めました。
鎌倉市役所には、世界遺産登録を担当する部署が設けられ、準備を始めています。
鎌倉は、早くから世界遺産の登録候補に挙がっていましたが、
環境保護による規制強化を懸念する商工業者の慎重な姿勢などのため、
これまで、登録の動きが鈍っていました。

世界遺産登録は、最近では観光政策の目玉として、各地で大きくクローズアップされています。
鎌倉に訪れる観光客数にこの世界遺産登録がどういう影響を及ぼすか、これから要注目でしょう。

 

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