湘南二都物語 第2幕 ミニバスの走る街 第3部 七里ヶ浜循環

            ○上の地図にある停留所の内、
  
           白色の停留所は、七里ヶ浜循環線と藤沢駅〜七里ヶ浜東台線の共通停留所
  
           オレンジ色の停留所は、七里ヶ浜循環線のみ止まる停留所
               
グレーの停留所は、七里ヶ浜循環線と辻鎌線(辻堂駅〜鎌倉駅)の共通停留所   です。
         

今回は、ちょっとユニークな路線のご紹介です。

その名を、七里ヶ浜循環線。

江ノ電の電車とバスが見事に連携した、これからの交通体系の理想像のようなケースです。

加えて、沿線は風光明媚な鎌倉の海を望む高台の高級住宅地。

皆さんを、すてきなミニトリップへとご案内しましょう。

(99.7.31.展示替えに伴い一部加筆訂正。ピンク字の部分です。2000.3.20.運行担当変更等に伴う記述追加・修正。緑字の部分です。2000.10.17.1点追加展示。茶字の部分です。2003.9.7.辻鎌線運行担当変更の記述追加。黒字の部分です。)

    

 この路線の大きな特徴は、電車とバス、両方を運営する江ノ電の強みを生かし、バス&レールシステム(運賃乗継割引制度)を導入していることです。また、関連路線として従来からある藤沢駅〜七里ヶ浜東台線(以下、東台線といいます。)がありますが、この路線を地域密着型に特化したものが、七里ヶ浜循環線と言えます。
 ここでは、東台線の模様も織り交ぜながら、路線のご紹介をしていきましょう。また路線ができた背景なども、おいおいご説明していきたいと思います。

 さてここは、七里ヶ浜駅の乗り場です。
 
丘の上には、瀟洒な住宅が建っています。江ノ電の七里ヶ浜駅が、ちょっとわかりにくいですが左手の中央、グレーの平屋の建物になります。
 この道を右手に行くと七里ヶ浜東台住宅地、左手に行くとすぐに七里ヶ浜の海岸です。

 ここの乗り場は、七里ヶ浜循環線(以下、循環線あるいは循環バス)の始発停留所であると共に、東台線の藤沢駅方面行き乗り場にもなっています。道を挟んで反対側に見えているのは、東台線の東台方面行き停留所です。
 住宅地内は、東台線が時計回り、循環線が半時計回りに走ります。循環線は、ちょっとの区間ですが海岸沿いの国道134号線を走るため、このような経路が走行しやすいといえます(渋滞にかからず、交差点の右折がない)。 

   
 江ノ電の踏切待ちをしている、循環バスです。ちょうど藤沢行きの電車と顔合わせしました。
 向こう側には、七里ヶ浜の青い海が広がっています。そしてその先には、江ノ島も見えます。はるか向こうには、伊豆半島や富士山の姿も、ぼんやりと見えています。

 国道134号線には、七里ヶ浜のバス停を共有している辻鎌線という長距離路線があります。この路線は辻堂駅〜鎌倉駅間、辻堂海岸から江ノ島海岸を経て鎌倉の由比ヶ浜までの長い距離をずっと134号線、つまり海辺を走るという非常にすばらしい景色が楽しめるバス路線ですが、134号線は、とにかく渋滞がひどいため、ダイヤ通り走れず、運行本数も現在では1日数本しかありません。そのためかお客さんも少なく、大変もったいないバス路線です。昔はこの路線も本数が多く、お客さんも大勢乗っていたのですが・・・

 話を循環線に戻します。踏切を渡ると、すぐに七高正門前バス停です。ここは循環線ができた当初は停留所がなく、あとで追加されたものです。その名の通りすぐそばに正門のある七里ヶ浜高校生(ちょっと勉強する環境としては良すぎますね!)のためというよりも、道を挟んで反対側にある鎌倉プリンスホテルのバンケットホール(宴会場)利用客のために設けられたバス停です。ここからバスは七里ヶ浜の高台に上るため坂をずっと上っていきますが、この坂からの眺望がまた素敵です(次の写真です)。

   

 高台への坂を上ってくる、循環バスです。ご覧のように、とても素敵なロケーションです。

 写真の左側には、鎌倉プリンスホテルの宿泊棟(失楽園ブームで有名になりました)と、七里ヶ浜ゴルフ場があります。この坂を上りきったところにある潮騒通りバス停は、これらの施設への利用客を対象にしています。七里ヶ浜循環線は、このように地域住民だけでなく、鎌倉プリンスホテル関係の利用者をも対象に、運行されています。

   
 駐在所前付近です。ここは七里ヶ浜住宅地の中心部で、スーパーや飲食店などが集まっています。
 この写真左手に、珊瑚礁というカレー屋さんがあります。七里ヶ浜の134号線沿いの店が有名ですが(特に夕暮れの景色が見事なため、いつもお客さんでいっぱいです)、ここが本店です。

 駐在所前バス停に隣接して、東台線の七里ヶ浜東台バス停があります。東台線はここからショートカットして、田辺広町バス停へ向かいます。

 さて、この辺でこの路線ができた背景をご説明しましょう。
 七里ヶ浜の奥にある高台には、広大な住宅地が広がっています。湘南の海を望む鎌倉の高台という、抜群の環境を誇るだけあって、別荘風の邸宅が並ぶ洗練された住宅街です。最寄りの駅は江ノ電の七里ヶ浜ですが、これまでは徒歩で駅に出るか、1時間に1〜2本の割合で運行されていた東台線を使うしかありませんでした。東台線は、藤沢駅に直通しているため藤沢方面に用のある人はそのまま乗っていけば良かったのですが、この路線は長距離な上、国道134号線を走行するため、土日など渋滞に巻き込まれ、運行時間が不規則になりがちで、決して使い勝手はよくありませんでした。(つづく)

   

 これが七里ヶ浜東台付近を走る、東台線のバスです。

 ご覧の通りこちらは、普通の路線バスが使われています。東台線と循環線は、住宅地内の回り方が逆になっているので、タイミングによっては、住宅地内ですれ違うこともあります。
 お気づきかも知れませんが、この上の風景とこの風景は、ほぼ同じ場所からの撮影です。

(つづき)そこで登場したのが、七里ヶ浜循環線です。
 運行経路はほぼ東台線と同じ(住宅地内、ただし逆回り)ながら、停留所を約2倍に増やした上、運行本数を大幅に増便するなど、文字通り住民の足となるべく配慮されています。
 また、前述した江ノ電(電車)との運賃乗継割引制度を導入、料金面からも利便性に配慮しています。具体的には、電車からこの循環バスに乗り継ぐ場合、又はこのバスから電車に乗り継ぐ場合は、単独でこのバスを使った場合の運賃170円が、100円になるのです。これで、七里ヶ浜住宅地の人が東台線を使って藤沢駅に出る場合と、循環バスから電車に乗り継いで藤沢に出た場合とで、運賃面で差はなくなりました(99.6現在、共に350円)。鎌倉方面は元々バス→電車乗り継ぎしか便がなかったので、実質的な運賃値下げです。そのため、循環バス登場後は、東台線は大幅な減便となりました。

   
 アカシア並木付近の風景です。落ち着いた邸宅街が広がっています。
 七里ヶ浜住宅街では、住環境を守るため建築協定を結んでおり、これも美しい街並みを作り出すもとになっているのでしょう。
 この写真左手は、鎌倉山に連なっています。

 なおここで使われているバスですが、以前藤沢駅南口〜高根線で使われていた小型バスです。最新のこまわりくんタイプのバスより、少し大きめです。床も、低床ではありません。
 この路線は、成熟した住宅地内を走るため利用者に比較的高齢の方が多く、そういう意味では低床バスの方が望ましいと言えるでしょう。このバスが検査にはいるときなどは、こまわりくん型の低床バスが応援に駆けつけます。

   

 行合坂を下る、循環バスです。写真の右側は、行合川の流れによる谷になっています。谷を挟んで反対側は、現在保存が叫ばれている、広町緑地の外縁部になります。

 ここも、坂の向こうに海が望め、すばらしい景色が楽しめるところです。七里ヶ浜付近は、個性的なスタイルの家が多く建ち並び、洗練された街並みを形作っています。この坂を下りきると、江ノ電の踏切を渡って、出発地、七里ヶ浜駅バス停にたどり着きます。

 かつて、この坂を下りて向かって左側、現在の七里ヶ浜高校入口付近の裏手斜面に柴崎牧場という牧場があり、牛などが放牧されているのが江ノ電の車窓からも見えたものです。牧場廃止後も、しばらくは名残の草地が残っていましたが、現在はそこにマンションが建設され、名残はすっかりなくなってしまいました。長谷の由比ヶ浜大通りに、柴崎牛乳店という店がありますが、それがこの牧場を運営していたお店です。

   
 行合坂を降り、まさに七里ヶ浜駅終点に到着寸前の、循環バスです。
 画面向こうに、今降りてきた坂道が写っています。あんな風景の所を通ってきたのですね。また画面左奥の緑が、広町緑地です。

 上で触れている柴崎牧場跡は、この風景右側に入ったところです。 (2000.10.17.追加展示)

   

 七里ヶ浜駅にある、のりつぎ券発行機です。
 江ノ電から循環バスに乗り継ぐ方は、改札を出る際にこの券を取って、バスに乗り継ぐようになっています。バス乗車時に、この券と運賃100円を払えばOKです。
反対に、バスから電車に乗り継ぐ際には、バス乗車時に江ノ電の何駅まで行くかをバス運転士に伝え、その行き先までの電車の運賃とバス運賃100円を払うようになっています。
 乗継割引制度があるため、循環バスではバス共通カード、回数券は使えません。すべて現金・先払いとなっています。
(2000.1.9より、上記の七里ヶ浜駅のりつぎ券発行制度(斜字部分)は廃止され、バス乗車時に口頭で申告すれば100円で乗車できることになりました。バスから電車に乗り継ぐ際は、従来通りです。)

 

路線の概要(1999年6月現在)

運転系統   七里ヶ浜駅―駐在所前―奥稲村―アカシア並木―田辺広町―七里ヶ浜駅

  ※始発のみ、七里ヶ浜発。

所要時間                   一周約10分
運転状況 平 日 始発(七里ヶ浜)6:31 
     終発(七里ヶ浜駅)22:05
     七里ヶ浜駅発6:45以降終発まで毎時0,15,30,45分発
     ただし22:00発は22:05発となる

土休日 始発(七里ヶ浜)7:01 
     終発(七里ヶ浜駅)21:30
     七里ヶ浜駅発7:15以降終発まで毎時0,15,30,45分発
     ただし10時〜18時台は0,20,40分発 

 運 賃
  七里ヶ浜駅
七里ヶ浜駅 170(100)

  ○運賃先払い方式。前扉から乗車、後ろ扉から降車。
  ○バス&レール制度採用
(江ノ電の電車と乗り継ぐと、( )内運賃額に割引)
  
電車からバス、及びバスから電車に乗り継ぐ際は、バス乗車時に運転手にその旨
  申告する。
(2000.1.9.より)
  ○共通カード、回数券使用不可。現金払いのみ。           

 担 当  江ノ電バス(株)(鵠沼車庫)  ※2000.3.16江ノ電本体より移管
特記事項  ○藤沢駅〜七里ヶ浜東台線は、運賃割引制度なし。住宅地内の循環は逆回りで、
 循環線の停留所に全部停車するわけではない。担当は、江ノ島電鉄手広営業所
 (手広車庫)。
 ○辻堂駅〜鎌倉駅線の担当は、江ノ島電鉄藤沢営業所。
 
(2001.3.16、江ノ電バス(株)(鵠沼車庫)へ移管。)


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