湘南二都物語 第2幕 ミニバスの走る街
第10部 長後駅西口〜上土棚団地循環・長坂上 (別項・長後駅西口〜こぶし荘〜湘南台駅西口)
長後地区は、藤沢北部における古くからの交通の要衝でした。
引地川の支流、蓼川沿いにある綾瀬市上土棚地区もまた、
相模の国からのいにしえの香りを感じさせる地区です。
今回ご紹介するのは、この、歴史色豊かな地区を快調に走るミニバス路線です。
藤沢市と綾瀬市の、都市間広域連携事業による実現です。
(2003年11月1日、綾南地区センター(上土棚中7)〜長坂上間が延長開業しました。あわせて運行バスを中型に変更。)
(2003.11.9.オレンジ字部分追記)
併せて、藤沢北部地区の老人福祉の拠点、こぶし荘へのアクセス路線もご紹介!
長後の街は、お隣湘南台地区の最近の発展により、ずいぶん影が薄くなってしまった感がありますが、もともとは藤沢市北部の拠点であり、さらに遡って中世から、相模の国における交通ジャンクションとして、重要な地位にありました。小田急江ノ島線においても、長後駅は昔からの急行停車駅であり、追い越し設備を持つ拠点駅としての機能を持っていました。そのため、駅周辺も古くからの商店などが建ち並んでますが、新しい街に比べると、何となく雑然とした雰囲気です。道幅も狭いところが多く、特に長後駅東口へ通じる長後街道(戸塚〜長後)は、幅の狭い道の両側に商店が建ち並んでいる中を大型バスが行き来するなど、交通事情はかなり劣悪です。 湘南台へ乗り入れた相鉄いずみ野線も、もともとは長後へ乗り入れる計画だったようですが、長後の街が既にある程度発展していたため、工事が大変であるなどの理由で、まだほとんど開発されていなかった湘南台へ向かうことになったようです。何しろ湘南台駅ができたのは1966(昭和41)年、一方の長後駅は、昭和初期、小田急江ノ島線開通当時からの駅(当初の駅名は、新長後)なのですから。相鉄いずみ野線の線形が、いずみ野駅の西側で大きく南にカーブしているのは、小田急との接続駅が長後から湘南台に変わったなごりです。 画面に映っているのは、長後駅西口駅前に停車中の、上土棚団地循環です。この路線に使われるミニバスは、神奈中標準の日野リエッセで、藤沢駅〜藤が岡線や、戸塚駅〜上矢部循環線と同じデザインです。長後は神奈中バスのエリアで、東口には、戸塚営業所をメインに一部綾瀬営業所、西口には綾瀬営業所の神奈中バスがそれぞれ乗り入れています。 |
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長後駅を出たミニバスは、しばらくは西の用田方面に向かって従来のバス路線を走りますが、
長後市民センターの西側で右折し、綾瀬市南部方面へと向かいます。この風景は、ちょうど奥田バス停の西側、藤沢市と綾瀬市の市境付近です。写っているのは上土棚団地行きで、まもなく引地川に架かる熊野橋を渡るところです。 私見ですがこの風景、何となく宮崎駿アニメの「となりのトトロ」を彷彿とさせませんか?これから先も、こんな風景が続きます。先ほどちょっと触れた熊野神社や、その先にある古いお寺(蓮光寺)の存在が、この付近一帯が古い歴史を持つ土地であることを物語っています。 |
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引地川に架かる熊野橋を渡っていく、上土棚団地行きのミニバスです。 この橋は、引地川に架かる橋としては、唯一綾瀬市内にある橋です。熊野橋という名前は、この橋の少し西側(画面では左側)にある熊野神社から出たものでしょう。橋自体は新しく掛け替えたばかりのようですが、きっと古くから架かる橋ではないかと思います。 橋の向こう側が引地川の上流方向ですが、ちょうど橋の右上あたりに見えるクリーム色の建物は、神奈川県立長後高校です。生徒数の減少から、2005年までに、六会にある神奈川県立藤沢北高校を統合する予定です。 |
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熊野神社の境内です。 ご覧のように、ちょっと神秘的な雰囲気の境内です。境内にある案内板によれば、天文8(1539)年に和歌山の熊野神社からここに合霊を祀り、社殿を造営したようです。相模風土記にはこの神社が上土棚鎮守であるという記述が見え、現在は神社本庁傘下の宗教法人なのだそうです。 |
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熊野神社の少し西側にある、蓮光寺の前を行く上土棚団地行きのミニバスです。 この蓮光寺も、由緒のあるお寺です。案内板によれば文禄3(1594)年に開基された浄土宗のお寺で、東京・品川にある、芝増上寺の末寺だそうです。ここには、綾瀬市指定文化財の子育て延命地蔵などが安置されているそうです。 これらの神社やお寺は、中世からずっとこの付近一帯の歴史の変遷を見守り続けてきたのでしょう。鎌倉や京都などの古都で我々は、そうした歴史の重さをしばしば感じるわけですが、この付近のような何気ない街の中にも実は、こうした歴史の重みを感じさせる史跡が残っているものなのですね。 上土棚団地は、もうすぐそこです。 |
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いよいよ、この路線の旅も終わりです。ここに写るのが、上土棚団地です。走っているミニバスは、あと少しで終点(団地内一周)の綾南会館バス停に到着です。 上土棚団地は、引地川の支流、蓼川沿いの河岸段丘下に造成された団地で、位置的には、綾瀬市の南端ということになります。手前に流れているのが、その蓼川です。(支流にしては、堂々とした流れですね!) またこの団地は造成されてから年数が経っているようで、高齢の方の比率も多いのか、長後駅近くにある藤沢湘南台病院という総合病院行きの無料直行送迎バスも、つい最近(2000年2月から)運行され始めたようです。この直行バスは、綾南地区センター前バス停発着で、ほぼ、今回ご紹介したミニバス路線のルートに沿って走るようです。 |
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2003年11月1日、綾南地区センター(上土棚中7)から、綾瀬市の落合南部地区にある長坂上までが延長開業しました。 上は終点、長坂上バス乗り場&折返場の様子、下は長坂上を出て、長後駅西口へ向かうバスの後姿です。 この落合南部地区は、綾瀬市広報によると、地形に起伏があったり狭隘な道幅のために交通不便地区と位置づけられていたそうで、地域住民の方々からも、バス路線開設の要望が多く挙がっていたそうです。 上土棚団地から蓼川を渡ると、段丘を上って落合南部地区に取り付くのですが、この部分の道の整備が進んだことが、今回の延長開業を促すことになったんだろうと思います。 なお延長開業に伴い、これまでのミニバスはすべて、ご覧のような標準的中型バスに置き換えられました。 また長坂上線は、上土棚団地内を長坂上行きは綾南地区センター回りで、長後駅行きは上土棚中7回りでそれぞれ運行します(運行経路を、上土棚団地循環に合わせているんですね)。 途中の街並みは、ひなびた里の風景といった趣ですが、分譲住宅の開発が始まってる場所もあったりして、これからは多少雰囲気も変わってくるのかも知れません。 終点長坂上のすぐそばには、東海道新幹線の線路が通っており(上画面右奥)、時折かすかに電車の通過音が聞こえてきます。 |
路線の概要(2003年11月現在)
運転系統 | 長40系統 長後駅西口−熊野神社−さがみ農協前−上土棚団地前−綾南会館−長後駅西口 長43系統 長後駅西口−さがみ農協前→綾南地区センター→ ← 上土棚中7 ←上土棚南−落合南−長坂上 (2003年11月1日開業) |
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所要時間 | 長40系統;全線15分(一周)・長43系統;約14分 | |||||||||
運転状況 | |
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運 賃 |
長40系統は、全区間均一170円 運賃前払い方式。前扉から乗車、後扉から降車。共通カード使用可能。 長43系統
長坂上→長後駅西口は前払い。長後駅西口→長坂上は後払い。共通カード使用可能。 |
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担 当 | 神奈川中央交通 綾瀬営業所 (綾瀬車庫) | |||||||||
特記事項 |