湘南二都物語 第2幕 ミニバスの走る街

        第7部 大船駅東口〜桔梗山(京急バス)
             
(京急ポニー号)

 備考;青字のバス停は、京急在来路線バスの停留所。ポニー号は通過します。

 

今回は、先進のミニバスをご紹介しましょう。

その名は、京急ポニー号。

白くてかわいいミニバスです。

湘南エリアでは今のところ唯一の、デマンド方式を採用しています。

終点の桔梗山付近では、鎌倉らしい旅情豊かな風景の中を快走します。

(2000.5.3.S字坂の風景を1枚追加展示。それに伴い、一部記述を修正。桃色字の部分です。
2001.2.26.ひかりが丘循環線の記述を追加。紫字の部分です。
2003.10.1.子会社への運行委託による記述変更、緑字の部分です。)

 

 まずはじめに、大船駅東口側、湘南モノレール大船駅につながるペデストリアンデッキから、西側を俯瞰した風景をご覧頂きましょう。

 大船というところは、湘南東部の交通のジャンクションで、バラエティー豊かな交通機関が集まってきます。JR線だけでも東海道本線、横須賀線、根岸線、横浜線が乗り入れ、成田エクスプレスの一部始発の他、横須賀線と横浜線、成田エクスプレスの基地・大船電車区や、JR大船工場などが集まっています。他に湘南モノレール、バスも京急・江ノ電・神奈中の3社が乗り入れています。その他、現在は運行休止中で桁のみ雨ざらしで残っていますが、西口側にはかつてドリームランド行きのモノレールも乗り入れていました。
 ここにはそれらの内、成田エクスプレス、湘南モノレール、京急・江ノ電の在来路線バス、そしてここでご紹介しているポニー号が写っています。

 大船駅には、合計4カ所のバス乗り場があります。そのうち東口に2カ所あり、ここ、湘南モノレール大船駅下(ルミネ・ターミナル)と、ここから北側に500メートルほど離れたところにあるマイカルSATYビル前のバスターミナルに分かれています。西口も同じく2カ所に分かれ、柏尾川沿いに通る県道阿久和鎌倉線沿いと、大船観音の南側下にあります。
 もともと大船駅のバス乗り場は、たこ足式に分散しており、東口など、昔は4カ所にも分かれていました。東口側の再開発事業が進展し、現在は2カ所にまとまったのです。

 東口には前述の3社のバスが発着しますが、そのうちここルミネ・ターミナルには、京急と江ノ電のバスが発着します。鎌倉山、江ノ島、鎌倉駅、藤沢駅、鎌倉湖畔住宅地方面などが、主な行き先です。
 なお2001年1月18日、大船駅東口2本目のミニバス路線として、ひかりが丘循環線(江ノ電バス)が開業しました。ミニバスの走る街第12部をご参照下さい。
 変わったところでは、羽田空港直行のリムジンバスもこのターミナルから出ています。横浜横須賀道路〜首都高湾岸線(ベイブリッジ)を経由し、約1時間で空港へ到着します。
 (西口は、神奈中バスのみの発着です。)

   

 ここが、京急ポニー号乗り場の7番ポールです。上に、モノレール大船駅が見えています。上空に、銀色の車体が輝くモノレールが行き来するルミネ・ターミナルは、鎌倉市内らしくない、ちょっと近未来的な雰囲気を醸し出している空間です。

 このルミネ・ターミナルは、大船駅では一番新しく整備されたターミナルです。平成4年秋、ルミネウイングという大船駅ビルができると共に、JRと湘南モノレールの駅を結ぶペデストリアンデッキなどと併せて完成しました。
 それまでこの付近は雑然とした雰囲気で、小さな商店が道沿いに建ち並んでいたほか、モノレールの駅も、JR駅に直結していませんでした。そしてモノレール下のこの場所は、京急専用の細長いバス乗り場になっていました。このバス乗り場ではバスの折り返しのために、専用のターンテーブルが備えられていたものです。
 そのころの江ノ電バス乗り場は、300メートルほど北側にある西友付近に2カ所分散していましたが、これらは屋根も何もない、ポール1本の路上の乗り場でした。ルミネ・ターミナルの完成で、江ノ電バス利用者はずいぶん快適にバスに乗れるようになったわけです。同時に、路上でバスが客待ちをすることにより車の流れに支障が出ていたのが、解消されました。

 なお、この7番バス停は、上で書いた羽田空港行きのリムジンバスと共用になっています。そのため、1時間に1〜2回の割合で、大型のリムジンバスがやってきて、羽田への旅客を乗せて発車していきます。
 ちなみに、このリムジンの始発は藤沢駅南口で、大船駅は途中停留所になります。京急(羽田営業所)と江ノ電(手広営業所)の共同運行です。 

   
 大船〜江ノ島(龍口寺)間には、昭和初期に日本初の自動車専用道(有料)として開通した、京急自動車専用道が通っています。鎌倉山の住宅地開発等に多大な貢献をしたこの道路は、現在は鎌倉市に移管され、市道(龍口寺付近は藤沢市道)となっていますが、大船発着の京急路線バスは、羽田空港行きのリムジンを除くすべてが、今もこの道を通っています。
 この風景は、大船駅を出てすぐ、横須賀線を越える山崎跨線橋の部分です。見えるのは大船駅行きのポニー号です。

 この跨線橋も昭和初期の完成で、老朽化が進んでいるため、橋脚などが太い鉄骨でかなり補強されています。又、橋上は2車線の車道になっているのですが、幅員が狭く、歩道のスペースがありません。でもこの橋は結構歩行者が通るので、歩行者、車とも、この橋を通るときは細心の注意が必要です。

 橋の向こう側に見えるのはモノレールの桁、下に見える電車は横須賀線のE217系電車です。

   

 湘南鎌倉総合病院前に止まる、桔梗山行き京急ポニー号です。背後に見えるのが、その湘南鎌倉総合病院です。
 湘南鎌倉総合病院は、大船地域をカバーする救急指定の総合病院です。医療法人として茅ヶ崎や大和に総合病院を展開する、徳洲会系の病院で、手術などで何例かの顕著な実績を上げており、多くの患者さん達に利用されています。

 この区間は、深沢方面に行く京急の在来路線バスとルートが重複していますが、湘南鎌倉病院バス停に停まるのはポニー号のみです。在来路線バスでこの病院に行くには、少し大船寄りにある天神下バス停で降りて行きます。
 これは元々バス停のないところに病院があとからできたためと、ポニー号の料金体系が在来路線バスより少し高めなので、利用者の混乱を避けたという2つの理由によるところが大きいと思われます。
 もっとも、この湘南鎌倉総合病院前バス停はポニー号開通当初にはなかったもので(在来路線バス区間はノンストップだった)、ポニー号のこれから向かう梶原・桔梗山方面の住宅地は比較的高齢の方が多く、通院需要が多いために追加されたという背景もあります。

 ところでここでも、上に湘南モノレールの桁が見えています。湘南モノレールは1970年に途中の西鎌倉まで、翌年に終点の江ノ島まで開通した、懸垂式(=ぶら下がり型)モノレールで、全区間が基本的にずっと、この元京急自動車道の上空を通っています。
 開通当初は、多分に実験的性格が強かったのですが、現在ではすっかり地域住民の足として定着しています。日中は7〜8分間隔で運行し、大船〜江ノ島間を13分で結びます。このモノレールは結構スピードが速く、走行中前を見ていると迫力があります。同じぶら下がり型モノレールの仲間が、千葉市内にも最近開通しました。

 この先ポニー号は、町屋付近まで元京急自動車道を走り、町屋交差点から独自ルートに入ります。

   
 町屋交差点から独自ルートに入ったポニー号は、丘の上の瀟洒な住宅街の中を走るようになります。この風景は、丸山通り4丁目バス停付近です。

 このエリアの住宅街は、昭和40年代前半頃開発されたものと思われ、すっかり成熟しています。住民の方も、前述のように高齢の方の割合が多くなってきており、ポニー号の開通で、ずいぶん便利になったことでしょう。
 ポニー号が開通する前は、モノレールの湘南町屋駅に出るか、反対側の梶原地区を走るバス停に出るかしか足がありませんでした。

   

 住宅地の広がる丘の頂上付近に、かわいいロータリーがありました。山の上ロータリーの風景です。
 見えるバスは、桔梗山行きです。左の方が大船方面、右へ行くと梶原地区に出ます。

 ロータリーというのは、ヨーロッパなどに今でもよく見られる交差点の形態です。交差点の中央に島(植え込みになっていることが多い)があり、やってきた車はこの島の周りを時計方向に回りながら、行きたい方向へとハンドルを切っていきます。よって、信号がありません。
 日本でも昔は各地に見られたようですが、現在はほとんどが、信号のついた普通の交差点になってしまいました。例えば、三浦半島西側の横須賀市内に、林という所がありますが、かつてここの国道134号と県道の三叉路地点に、有名なロータリーがあったものです(林ロータリー。現在は林交差点。)。現在は島の名残こそ残っていますが、信号のついた普通の三叉路の形態です。
 又、このすぐ近く、梶原口や鎌倉山にも、ロータリーの名残(2ヶ所ともロータリー形態は残るが、信号がついている)があります。
 山の上ロータリーは、規模こそささやかですがロータリーとして残った交差点として、ちょっと貴重な気がします。

 ポニー号もこのロータリー付近から、三方向に路線を延ばします。ポニー号を特徴づけるデマンド区間が、ここから始まるのです。
 デマンド(需要)区間というのは、文字通り乗客の需要に応えて、バスが走るというものです。バス車内には、「デマンドコールボタン」が付いており、デマンド区間のバス停に行きたい場合はこのボタンを押すことによって、運転手にその旨知らせます。一方、バス停にもコールボタンが付いていて、デマンド区間のバス停からバスに乗りたい場合はこのボタンを押すと、バスの運転手にその旨が伝わり、バスをデマンド区間へ乗り入れる、という仕組みです。ポニー号では、深沢中学上、大平山公園の2停留所が、デマンド区間になっています。

☆デマンド区間のご案内は、こちら

   
 デマンド区間を抜けたポニー号は、再び山の上ロータリーに戻ると進路を東向きに変え、一路桔梗山へと向かいます。山の上中央バス停付近(左側にポールが見えます)、桔梗山行きポニー号の風景です。

 この付近は、梶原山住宅地の北辺となっていて、ちょうど山の尾根のような所を走ります。この北側(画面では右側)には、鎌倉中央公園が広がります。
 あたりには、相変わらず瀟洒な邸宅が立ち並んでいて、明るく落ち着いた雰囲気を醸し出しています。道幅は住宅街の中ということで、ここも狭くなっています。

   

 ポニー号は尾根づたいに進むと、再び2車線の道に出ます。県道藤沢鎌倉線の、梶原口へ抜ける道です。
 バスはここから進行方向を変えて、梶原口方面へと向かうのですが、ここはちょうど、梶原山から谷戸(小山と小山の間の谷あいがこう呼ばれる。鎌倉にはこうした谷戸が多い)へ降りるつづら折りの坂道になっています。
 その形がちょうどSの字のようなので、「S字坂」と呼ばれるのですが、この風景は、春爛漫、満開のソメイヨシノの並木の下を行く、大船行きのポニー号の様子です。

 そしてこれは、S字坂のつづら折りの坂道を下から登ってくる、大船行きのポニー号の様子です。暖かい秋の日差しをいっぱいに浴びながら、坂道を上っていきます。

 画面右側に、S字坂の下に立ち並ぶ住宅が写っています。また背後には、鎌倉の豊かな緑をたたえた山々が連なっているのがわかります。
 この付近は、梶原山住宅地の一番奥のエリアになるのですが、このあたりまで来ると、鎌倉に残る素朴な自然の味わいを、感じることができるようになります。
 背後の山の向こう側は、北鎌倉エリアになります。

   
 ポニー号の小さな旅も、終盤に入りました。
 S字坂を下りたポニー号は、再び脇道に入り、山の麓を回り込むように走ります。この山が、桔梗山です。

 これは、S字坂下〜源氏山入口間を行く、大船駅行きポニー号の風景です。
 この風景は午前中の撮影ですが、ポニー号のまわりを囲む豊かな緑と、背後からさす柔らかな日差しが、ひなびた山里の雰囲気を醸し出しているように感じられます。
 右手の山は、これから登っていく桔梗山、そして正面に見える小高い山の向こう側に、バス停の名にもある源氏山があります。

 この源氏山は、桜の名所として有名です。頂上に広がる源氏山公園は、春や秋、多くのハイカーで賑わう鎌倉ハイキングコースの中心地です。
 源氏山周辺には、鎌倉七切通の一つ化粧坂(けわいざか)や、銭洗弁天、佐助稲荷、鎌倉五山の一つ寿福寺などの名所が散在しています。また源氏山を東南側に降りると、鎌倉裏駅(西口)がもうすぐです。

 源氏山入口バス停を過ぎると、ポニー号は桔梗山頂上を目指して上り坂に入ります。もう終点は目前です。

   

 ついにポニー号は、終点、桔梗山に到着しました。

 ここは桔梗山の頂上で、周りには、鎌倉グリーンハイツという中層集合住宅と、豊かな自然が広がっています。
 ここに着いたバスは、折り返し発車するまで必ずエンジンを止めるのですが、エンジンの唸りが止むと、あたりは文字通り静寂に包まれ、それを破るのは時々聞こえてくる鳥のさえずりくらいしかなくなります。
 住民の方々の手によりバス停のまわりにも、花などが植えられ、きれいに整備されています。ログハウスっぽい小さな待合所もあります。

 桔梗山は、元々は江ノ電バスの終点で、従来、藤沢駅と鎌倉駅から、それぞれ桔梗山行きの在来路線バスが乗り入れていました。この写真にも、ポニー号の前に江ノ電バスが写っていますね。
 江ノ電バスは、ポニー号が来た道と反対側から、すなわち県道藤沢鎌倉線方面から、梶原口を通って桔梗山へとやってきます。京急バスにも梶原口側から来る在来路線バスがあるのですが、それは桔梗山までは来ず、途中の梶原バス停で折り返しています。
 ポニー号が桔梗山まで来たことにより、現在桔梗山からは、藤沢、鎌倉、大船の各方面へ行くことができるようになったわけで、ずいぶん便利になりました。バスの運行本数も、やや鎌倉方面が少ないのですが、ほぼ同じ頻度で運行されています。

 ・・・ポニー号の小さな旅の終着は、実にすがすがしい気分を味わうことができる、山頂のバス停でした・・・♪


路線の概要(1999年11月現在)

運転系統
(船50系統)
   大船駅−丸山通り1丁目−山の上ロータリー ――――― S字坂下−桔梗山
                                 ↓  ↑     
                  (デマンド区間)深沢中学上→大平山公園
所要時間                      直行便;約19分
            (デマンド区間走行時の総所要時間;23〜24分)
運転状況
 
平日 始発(大船駅発) 6:40    (桔梗山発) 6:10
     終発(大船駅発)22:40    (桔梗山発)23:01
     (大船駅発深夜バス・23:25)

          6〜8,17〜20時台、約10〜15分毎。
         9〜16,21〜22時台、約20〜30分毎。
※6〜8時台に、深沢中学上始発大船駅行き、大船駅発山の上ロータリー行きあり。

土休日 始発(大船駅発) 6:47    (桔梗山発) 6:23
      終発(大船駅発)22:20    (桔梗山発)21:51

              終日、約25〜30分毎。

運 賃
      桔梗山
    山の上
ロータリー
200(340)
  湘南鎌倉
総合病院前
200(340) 230(400)
大船駅 220(380) 220(380) 260(460)

   ○運賃表内の( )内は、深夜バス運賃。
   ○整理券方式運賃後払い
   ○バス共通カード使用可能

担 当 京浜急行バス 鎌倉営業所(下馬車庫)(2003.10.1.京浜急行より運行委託)
特記事項   デマンド運行区間あり。この区間での乗降では、バス停あるいはバス車内に
  ある「デマンドコールボタン」を押して、運転士にその旨知らせる必要がある。


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