湘南二都物語 第2幕 ミニバスの走る街

   第6部 藤沢駅南口〜渡内中央(江ノ電バス)

 

今回ご紹介する路線は、江ノ電バス開設第1号の都市型ミニバス路線です。

従来神奈中バスエリアだった藤沢東部の渡内地区に、江ノ電バスが食い込みます。

見事な運行ルート設定で、渋滞を巧みに避け、定時運行を実現しています。

藤沢駅北口〜藤が岡循環線に続いて開設された、地域住民提案型の面目躍如たるバス路線です。

(2000.3.20.運行担当の委託化による記述追加変更。青字の部分です。)

 

 藤沢駅南口、小田急百貨店前の乗り場です。渡内中央線を走るのは、第1部でご紹介した高根線と同じミニバス(愛称:こまわりくん)です。

 藤沢駅南口バスターミナルは、唯一の江ノ電バス専用ターミナルになっています(羽田空港線相互乗り入れの京急バスを除く)。
 ここからは、手広方面鎌倉駅(深沢線)・桔梗山・大船駅行き、津村・片瀬山・七里ヶ浜東台(第3部参照)循環、江ノ島・鵠沼車庫行き、高根行きなどが発着しています。また江ノ電バス唯一の高速路線、藤沢駅〜大船駅経由〜羽田空港線(京急バスと相互乗り入れ)も南口から発車しています。

 高根線の項でも触れましたが、藤沢駅南口では、かつては現在のバスターミナルを突っ切って江ノ電の線路が延びており、直接東海道線藤沢駅構内、現在の駅ビルFLORA付近に乗り入れていました。1974年に江ノ電百貨店(現在の小田急百貨店)ができ、江ノ電藤沢駅が同百貨店の2階に移転したときにバスターミナルも整備され、現在の形になりました。

   
 藤沢駅を出たバスは、川名橋までは深沢線と共通の細い道を行きます。この道は、現在、南藤沢交差点で国道467号線と交わる県道の旧道です。

 日ノ出町〜川名橋間、境川に架かる大道(おおみち)橋を渡っていく、渡内中央行きのミニバスです。背後に並んで川を渡る東海道線の電車が見えますが、15両の長大編成を組む電車を尻目に、つつつつと橋を渡っていくミニバスの姿が、とてもユーモラスですね♪
 渡内中央線は、この先小塚地下道入り口まで、東海道線と平行した道を走ります。

 この路線は藤沢駅北口〜藤が岡循環線に続く2番目の地域住民提案型のバス路線として、1997年9月に開設されました。開設を要望した村岡自治町内会連合会と江ノ電との間で、藤沢市の仲介により調整が行われ、運行ルートやバス停の位置が決められていったそうです。その結果、南口からこの道を通って小塚地下道を経由するルートが採られたわけですが、これはまさに当路線のポイントであり、おかげでこの路線では、ほとんど渋滞に引っかかることがなく、運行の定時制が保たれています。

   

 山武前付近です。写っているバスは藤沢駅行きです。

 以前このミニバス路線ができるまでは、ここにある山武(元、山武ハネウエル)の工場への通勤輸送のために、藤沢駅南口〜山武前間のシャトルバスが平日の朝夕のみ運転されていました。これは今でも健在で、江ノ電手広営業所の一般車が運用されており、乗り場も渡内中央線と同じポールです。シャトルバスは、山武の敷地内で折り返します。

 左手にあるのが山武の工場ですが、シャトルバスのバス停が敷地内にあるのが見えています(写っているバスの左側。右側の道ばたにあるのは、渡内中央線の山武前バス停)。

   
 この路線は、小塚地下道で東海道線をくぐって山側に出、一路渡内方面を目指し北上します。これは地下道をくぐり抜けてきた藤沢駅行きで、ここを画面左手に曲がって駅を目指します。

 小塚地下道は結構出入口が急勾配になっており、大雨の時など、時たま地下道下部に水がたまってしまうことがあります。当然そんなときは、通行止めになります。画面左手に、その旨の看板が出ていますが、そのようなときはこの路線はどうなってしまうのでしょう?・・・99.10現在、地下道の少し藤沢寄り(画面左手)で東海道線をまたぐバイパスの工事が行われているのですが、多分、そちらを迂回するようになるのでしょう。渡内中央線開通後、これまで幸いにも雨がたまって地下道が通行止めになったことがないのでわかりませんが(笑)。

 この付近は中小企業の工場が集積しており、ちょっと殺風景な雰囲気です。地下道の上部に、東海道線の線路があるのが見えます。また左手背後に見えるこんもりした緑は、この付近の地名にもなっている、弥勒寺の森です。

   

 渡内中央を目指し北上するバスは、途中高谷交差点で藤沢駅北口〜武田薬品前経由〜大船駅線の江ノ電バス路線と交差します。ただここでは単に交差するだけで、相互乗り換えに便利なようにはなっていません。交差部のバス停もそれぞれ名前が違い、離れています(村岡東二丁目と、小塚。上の絵地図参照)。

 この交差点を過ぎると、バスはしばらく住宅地の外縁部を走りますが、やがて渡内地区への急坂を上り始めます。それがこの風景(高谷小入口〜渡内会館入口間)ですが、かなりの急坂なことがおわかりかと思います。ここは、歩いて登るのは結構かったるいです。またこの付近は既存のバス路線からも離れており、公共交通の不便なエリアでした。

 この付近の東海道線山側のエリアは、東海道線沿いだけが江ノ電バスエリアで、その北側はずっと神奈中バスエリアになっており、当然渡内地区も神奈中バスエリアといえます。現に藤沢駅北口〜藤が岡循環の項でご紹介した、神奈中バスの船32系統(藤沢駅北口〜渡内経由〜大船駅線)が渡内地区を走っており、そう言う意味では渡内バス停近くの渡内中央まで江ノ電バスが入り込むのは、ちょっと画期的なことかも知れません。
 渡内中央線ももし藤沢駅北口発着だったら、藤が岡循環同様、神奈中バスの担当になったかも知れませんが、南口発着になったために、江ノ電バス担当になったのでしょう。
 南口発着になったのは前述のように渋滞を避けるのが目的ですが、では、この船32系統の利便性はどうなのでしょうか?藤が岡循環の項でも若干触れましたが、次で詳しく解説しましょう。

   
 この路線は渡内中央行きということですが、実質は渡内中央の次、ここ渡内二丁目が終点です。
 この付近はご覧のように住宅街の中で、閑静な雰囲気、道も狭くなっています。この終点付近でバス路線はくるりと一回転して、もと来た道を藤沢駅へと戻っていきます。高根線の高根バス停のように、完全な終点の形態はとっていません。

 上で述べた神奈中バス船32系統ですが、渡内中央からすぐのところに船32系統の渡内バス停があります。
 渡内中央線ができる前は、この付近一帯の方(かなり広範囲)はほとんどこの渡内バス停を利用されていたと思いますが、この路線で藤沢駅北口に出ようとすると、平日でも渡内中央線の1.5倍(約15分)の時間がかかります。更にこのバスは、名うての渋滞ポイントである藤沢橋を経由すること、藤沢駅北口へ入る経路が大回りになること、そしてこの大回り経路も土休日マイカーで大渋滞することなどにより、最悪の場合、1時間近くの時間がかかってしまうこともあります。
 このように船32系統の使い勝手は悪く、渡内地区や隣の藤が岡地区の方々は、大いに不便をかこち続けてきたわけです。そのため登場したのが藤が岡循環であり、今回ご紹介した渡内中央線であるわけです。

 渡内中央線は繰り返しますが小塚地下道経由で藤沢駅南口に出るのがミソなのですが、他の選択肢としては上で触れた高谷交差点から武田薬品線に合流し、藤沢駅北口に向かうという方法も可能です。これがなぜ採られなかったか?それはやはりこの経路も、藤沢郵便局前交差点が渋滞し(このことも藤が岡循環の項で触れてますが)、定時運行が保てなくなることが多いからです。

 以上のように、渡内中央線の現在の運行経路は、よく考えられた非常にうまい路線設定だといえるでしょう。まさに、地域住民提案型のメリットをフルに生かしたバス路線だといえます。

路線の概要(1999年10月現在)  

運転系統

   
   藤沢駅南口−山武前−小塚地下道前−高谷−渡内中央−渡内二丁目−藤沢駅南口     

区間運転なし(ただし平日の始発のみ、渡内中央始発)
  

所要時間 全線約20分 (渡内中央まで約10分)
運転状況
平 日 始発(渡内中央)6:35 (藤沢駅)6:40
        終発(渡内中央)21:50(藤沢駅)21:40
土休日 始発(渡内中央)6:50 (藤沢駅)6:40
        終発(渡内中央)20:20(藤沢駅)20:10

平日は始発〜8時台まで15分毎、以降30分毎。土休日は、終日30分毎。

運 賃
    渡内二丁目
   高谷  180
 藤沢駅  180 190

運賃払い方式。後ろ扉から乗車、前扉から降車。共通カード使用可能。

担 当 江ノ電バス(株)(鵠沼車庫)
特記事項 99.9.15まで、藤沢駅−高根線と車両共用だったが、現在は単独運用。
2000.3.16より、担当を江ノ島電鉄藤沢営業所から、江ノ電バス(株)に委託化。
車両は再び高根線と共用。

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