湘南二都物語 第1幕 江ノ電をめぐる情景
第2部 柳小路〜(湘南海岸公園)
電車は、次第に鵠沼の住宅地へと進んでいきます・・・
柳小路駅です。
この駅も、無人駅です。無人駅では、乗務員の方がキップを集
札するので大変です。
かつては、土盛りして囲っただけみたいなひなびた駅でしたが、
今では改修されてきれいになっています。
あたりには、鵠沼の住宅街が広がっています。古くからの住宅
街の中心地は、次の鵠沼駅付近ですが、
柳小路駅の周りも、落ち着いた住宅街が広がっています。
何よりも、「柳小路」というネーミングがいいですよね!
藤嶺学園鵠沼女子高校が、この駅のすぐそば、住宅街の中にあります。
またこの学校の裏には、蓮池という池があります。「鵠沼」という地名の由来だと言われている池です。
柳小路駅南側にある踏切上から、 鵠沼駅方面を望む。 |
これが蓮池です。 2000年夏、蓮が見事に咲きました! |
江ノ電の旅というと、普通は鎌倉〜江ノ島間がメインのように
思われがちです。
確かに、そうとも言えるのですが、
何度も江ノ電に乗っていると、次第に藤沢〜江ノ島間の真の魅力に引き込まれると思います。
この区間は、明治以後開発された由緒ある鵠沼の別荘地を抜
けて走り、
沿線は、特に鵠沼駅を中心とした区間に、昔ながらの松林が残るなど、落ち着いたたたずまいを見せています。
岸田劉生、和辻哲郎といった文化人達も居住したこの鵠沼の
地。
ここでは、明治に始まる近代日本の息吹を浴びながら、上質のタウンウォッチングを楽しむことができるのです。
旧藤ヶ谷駅付近から、藤沢方を望む | 同左、鵠沼側を望む 線路右側のスペースが、藤ヶ谷信号所跡です。 |
開業当時は、柳小路と鵠沼の中間付近に、藤ヶ谷という駅があ
りました。
この名前は、今でもこの付近の地名として健在です。
(江ノ電と平行する国道467号線沿いを走る江ノ電バスには、藤ヶ谷というバス停もあります。)
また、
1980年代に行われた境川改修に伴う、鵠沼鉄橋掛け替え及び鵠沼駅改築の際には、
旧藤ヶ谷駅付近に、臨時の信号場(電車がすれ違う場所)が設けられていました。
藤ヶ谷信号場と、リバイバルネームで呼ばれていたこの場所は、現在でもそのスペースが残っています
また鵠沼駅自体も、信号所の鵠沼寄りの道ばたに、細長いホームの仮駅が設けられていました。
もうこのあたりは、すっかり鵠沼の落ち着いた住宅街になって
います。
鵠沼は道が細いのが特徴ですが、江ノ電の線路沿いのこの道も、車がすれ違うにはぎりぎりの幅しかありません。
明治の昔、このあたりはずっと松林が続いていたそうです。
今でも、背の高い松の木が所々に残り、当時を偲ばせます。
現在の鵠沼駅。 駅前の石畳は、旧駅時代と変わりません。 |
江ノ電唯一、地下に改札があります。 |
鵠沼駅は、半地下式の駅舎を持つ近代的な駅に生まれ変わり
ました。
かつての駅は、石畳の先にかわいい木造の駅舎があり、
相対式ホームを持つ、まるで模型のセットのような感じの交換駅でした。
改築予定があったため、最後まで、路面電車のような架線が残っていたものです。
また鵠沼駅は、明治時代より拓かれた鵠沼別荘地の中心駅とし
て、
ちょうど東急東横線の、田園調布駅のような位置づけの駅と言えます。
駅前の小高い丘の上にある賀来神社には、「鵠
沼海岸別荘地開発記念碑」が建てられており、
鵠沼開拓の歴史を伺い知ることができます。
(この碑については、かっしーの家藤沢館・鵠沼海岸7丁目の項でご紹介しています。)
背の高い松、趣のある古い家、そうした風物をここ、鵠沼では じっくり味わってみて下さい。
鵠沼駅での交換風景。 このホーム先端からは、江ノ島が見えます。 |
鵠沼鉄橋を渡る、鎌倉行き電車 |
鵠沼鉄橋を上流側から俯瞰。 この付近は、一番鵠沼らしさが残っています。 |
同左、下流側から俯瞰。 鉄橋の向こうに見える小高い丘陵は、片瀬山です。 |
江ノ電の鵠沼鉄橋は前述の通り、境川の河川改修工事のため架け替えられてしまいましたが、
旧鉄橋は、「電気橋」と呼ばれる細い橋桁だけの鉄橋で、鵠沼の風景にとけ込んだ非常に味わい深いものでした。
当然ここは名撮影地で、休日など、たくさんのカメラマンの姿を見かけたものでしたが、
現在の橋になってからは、ほとんどその姿を見かけなくなりました。
護岸もその当時は、草の生い茂るのどかな感じでしたが、
現在はプレジャーボートの係留が続く、味気ないものになってしまいました。
※鵠沼鉄橋付近の風景では、こちらもどうぞご覧下さい♪
「RELHAM
のホームページ・境川そぞろ歩き−江ノ島電鉄境川橋梁−」
鵠沼鉄橋を渡って・・・ この広場、春は桜がきれいです。 (最近、この広場にも住宅が建ち並んでしまいました・・・) |
鵠沼〜湘南海岸公園間 |
鵠沼鉄橋を渡り終えた電車は、明るい住宅地の中を、くねくねとカーブしながらゆっくりと進みます。
江ノ電は元々は片瀬県道、現在の国道467号線上を走る予定
でしたが、
車夫の反対に遭って、現在のルートになった歴史があります。
そのため、特に鵠沼以南、線路はぐにゃぐにゃ曲がりくねって、
一部では、路地裏のような所を走る羽目になりました。
しかし今になってみれば、かえってそれで良かったのかもしれ
ません。
路面区間がずっと続いていたら、
各地の路面電車がたどったような、廃止への道を歩んでいたかも知れませんから。
実際、467号線は交通量が多く、夏場など、渋滞することがよくあります。
この何気ない風景も、得難い味わいがあると思います。
間もなく、湘南海岸公園駅です。